中国:茶馬古道をゆく
中国南西部の雲南省では、モンスーンがもたらす湿った空気と、山々から吹き下ろす冷気とが交わります。そこには、樹齢千年を超えるものを含む、世界最古級の茶樹が今も息づいています。伝説によれば、茶を発見したのは神農帝でした。約5000年前、沸かしていた湯の中に偶然茶葉が舞い落ちたことが、その始まりだったといわれています。今も茶の村々では、立ちのぼる湯気が朝霧と溶け合い、この神話を思わせるような光景を見ることができます。
やがて茶は、単なる飲み物以上の存在になっていきました。時には「貨幣」としての役割さえ担ったのです。固く圧縮された磚茶は、唐代や明代には税や軍人への給与の支払いにも用いられました。キャラバン交易では、茶の塊ひとつが馬一頭に相当する価値を持つこともありました。そして茶と引き換えに、帝国の戦争に欠かせない馬が運ばれてきました。こうして生まれたのが、雲南とチベット高原、モンゴル、さらにはインド国境付近までを結ぶ、全長4000キロメートルを超える茶馬古道です。
その歴史の鼓動は、現在も虎跳峡に感じることができます。伝説では、一頭の虎が金沙江をひと跳びで渡ったことからその名が付いたとされています。しかし実際にこの険しい峡谷を何世紀にもわたって行き交ったのは、茶や物資を積んだラバを連れるキャラバンでした。断崖と雪山のあいだを縫うように、彼らはこの道を進んでいったのです。
雲南はまた、多様な文化が幾重にも重なる土地でもあります。ナシ族発祥の地とされる白沙では、15世紀に描かれた壁画が今も残り、そこには仏陀、道教の神々、チベット仏教の守護尊が同じ画面の中に共存しています。異なる信仰の図像が重なり合うその姿は、この地に明確な文化的境界があったのではなく、さまざまな世界が絶えず行き交っていたことを何より雄弁に物語っています。
そして、この山々から生まれるもうひとつの象徴が、プーアル茶です。数か月、あるいは数十年もの時間をかけて熟成されるこの茶は、やがて「宝」のような価値を持つようになりました。孟海やシーサンパンナの市場では、長期熟成されたプーアル茶の餅茶ひとつに、ボルドーの希少な高級ワインにも匹敵する価格が付くことがあります。