サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
  • 9 分
  • ロマンチック

サリー・ハンブルトン「子どものころ、目を開けると、部屋のあらゆるところで花が咲いていた」

編集スタッフ寄稿 写真:ゴンサロ・ヒメノ

サリー・ハンブルトンは幼少期を花に囲まれて過ごしました。10年間、株式仲買という冷酷な数字の世界で働き続けましたが、2003年に、フラワーデザインに身を捧げるという夢を実現しました。それ以来、彼女のブランドはフラワー業界における創造性、美しさ、品質の基準となっています。彼女のユニークなブーケは、目と心を魅了するホンモノの喜びを与えてくれます。

 

サリー・ハンブルトンとは?

私のサリー・ハンブルトンというブランドは、私自身と私の好きなものをそのまま反映したものです。夫はいつも、私が行う市場調査は私自身に基づいていると言います。「サリー・ハンブルトン」はフラワーデザイン会社でありながら、花をアレンジするための素材や容器も提供しており、質感、テキスタイル、色彩、感覚など、様々なこだわりを持っています。

作品には、50年間の人生で私を幸せにしてきたものの多くが反映されているのです。例えば、私の世界観にはイギリスらしさが深く根付いています。

私の母はイギリス人で、私は4人姉妹の長女。母は50年間スペインで暮らした後も、100%イギリス人でした。小さい頃、部屋で目を開けると、カーテンや壁紙、クッション、洋服......いたるところに花が咲いていました。

 

どうやって花の世界に入ったのですか?

インテリアデザインの勉強をしたのですが、結局、10年間株式仲買の仕事をすることになり、2001年に解雇されました。退職金もなく、何もすることがなかったので、フラワーデザインを勉強するためにイギリスへ行き、マドリードに戻ってから2003年に自宅で小さなワークショップを立ち上げました。すぐに軌道に乗り、ビジネスが成長し始めました。

最初の5年間はソーシャルメディアや広告投資は一切しなかったのですが、創業当初から著名人や特別なイベントに花を贈っていました。海外からスペインに移住してきた方々が、口コミで私たちの顧客になってくれたこともあります。

創業当初から紙媒体にも掲載されていましたが、今ではソーシャルメディアの登場で状況は一変し、露出度とブランド認知度は飛躍的に向上しました。

サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
サリー・ハンブルトンは20年にわたり、マドリードで最も美しいブーケをデザインしてきました。写真:ゴンサロ・ヒメノ
サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
マドリードにある彼女の工房では、毎日、旬を迎えた最高の花を厳選しています。

花を見ると、そこに何を感じますか?花はあなたに何を伝えますか?

花は、添えられたカードに何も書かなくても、しばしば何かを語りかけます。例えば、今朝私たちは葬儀用のリースを作りました。とても気に入っています。

私たちの花は、人生の大切な瞬間、赤ちゃんが生まれた時だけでなく、愛する人が亡くなった時も、人々のそばに寄り添います。時には何もカードに書く必要はありません。花はすべてを表現してくれるのです。この点において、花がもたらすものは魔法のようです。

誰もが花を愛しています。これは他の製品や物ではなかなか見つけられない現象です。一般的に、花を受け取った人は皆、それを最高の贈り物だと捉えますよね。

 

花束を買いに来た人にどんなアドバイスをしますか?

まず、花は傷みやすいということを理解していただく必要があります。今日は美しいラナンキュラスがあるかもしれませんが、来週にはそれは今ほど良くない状態かもしれません。

現在はオンラインで販売していますが、お電話をいただいた際には、ブーケを誰に贈るのか、どんな家なのか、何のためにブーケを選んだのかをお伺いします。

私は花を選び、他のものと調和するように心がけています。ただし、私の店ではトロピカルフラワーは取り扱っていません。遠くから運ばれてくるので、サステナビリティ(持続可能性)があまり高くない上、私のスタイルには合わない、非常に刺激的な色と質感を持っているからです。

 

あなたのお気に入りは何ですか?

私にとって理想的なのは、6月のイングリッシュガーデンや、シシングハーストのような球根ガーデンで見られる花々です。

シシングハーストは、1940年代に作家ヴィタ・サックヴィル=ウェストがケント州に作った、ロマンチックで叙情的、そして時にワイルドな雰囲気を持つ庭園です。それぞれの区画や「ガーデンルーム」に分かれ、アーツ・アンド・クラフツ運動にインスピレーションを得て花を栽培しています。

私にとっては、ブーケがその季節を反映していることが重要です。冬にはチューリップ、ヒヤシンス、ラナンキュラスなどの球根、夏にはバラ、シャクヤク、アジサイ。トレンドは季節そのもの。その時に自然が与えてくれる花々によって決まるのです。

 

これまでに作った中で最も変わった、あるいは独創的なブーケは何ですか?

今まで作った中で最も独創的なものは、バレンタインデーに女性が男性に注文した500本の赤いバラの花束ですね。

「あらゆる美しいもので自分を養ってください。そこからあなた自身のスタイルが生まれます」

庭から花瓶に飾られるまで、花はどうやって育つのでしょうか?

花は畑で育ちます。そこで種が植えられ、花が咲くにつれて少しずつ刈り取られます。国産花の場合、収穫と包装が同じ日に行われることが多いため、収穫から花瓶に飾られるまでわずか3日しか経っていません。オランダ産の場合は1週間か10日ほど、コロンビア産の場合は12日間も水に浸けられていないこともあります。

スペインでは、花は手摘みで収穫され、オランダ産よりも刺激の少ない肥料が使用されます。スペイン産の花はオランダ産よりも多少繊細ですが、化学物質の含有量は少ないのです。私は近年この点をますます重視するようになりました。

 

花を長持ちさせるためにはどうすればよいのでしょうか?

結局のところ、すべては常識の問題です。花は熱や急激な温度変化、隙間風が苦手で、水やりが必要です。もしかしたら、工夫によって寿命を1日か2日延ばせるかもしれませんが、花束の平均寿命は4~5日です。

ドライフラワーは今とても人気ですが、私にとっては生花の色と生命力を失った死骸のようなものです。でも、チューリップのように乾燥しにくい花もあるとはいえ、高価な花だからこそ、花束をドライフラワーにして保ちたい気持ちは分かります。

サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
サリー・ハンブルトンのブーケ・スタイルは、英国の田園地帯に咲くワイルドフラワーの自然さを表現しています。
サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
サリー・ハンブルトンは、マドリードのガブリエル・ロボ通りにあるアトリエで、20年にわたり最も美しいブーケを制作・デザインしています。

ヴァージニア・ウルフは「一輪の花の魅惑的な美しさを理解できるまでは、人生そのものの意味や可能性を理解することはできない」と言いました。私たちは花から何を学ぶことができるでしょうか?

花から学ぶことができるのは、希望と忍耐です。鉢植えに種を植え、それが芽を出し、やがて花を咲かせるというのは、偉大な信仰の行為だと思います。まさに魔法のようです!

花はまた、再び芽を出すためには、時には立ち止まることも必要であることを教えてくれます。私にとって、花の世界は広大な知識と継続的な学びの場なのです。

 

あなたは、イギリスのサセックスとケント地方にあるブルームズベリー・グループとゆかりのある庭園を訪ねるツアーを企画されていますね。こうしたツアーについて少し教えてください。

花の世界をテーマにしたツアーです。私たちはサセックスとケント地方の美しい庭園や、作家ヴァージニア・ウルフの妹で画家のヴァネッサ・ベルの邸宅など、いくつかの邸宅を訪れました。ヴァネッサは、経済学者のジョン・メイナード・ケインズ、リットン・ストレイチー、クライヴ・ベル、E・M・フォースターといった芸術家や知識人とともに、いわゆるブルームズベリー・グループに属していました。

このグループは時代を先取りしていたと思います。彼らは自ら庭を耕し、家具を自ら作り、塗装していました。

  • サリー・ハンブルトンのラグジュアリーガーデンツアー。
  • サリー・ハンブルトンのラグジュアリーガーデンツアー。
  • サリー・ハンブルトンのラグジュアリーガーデンツアー。
  • サリー・ハンブルトンのラグジュアリーガーデンツアー。
  • 典型的な英国風コテージの庭でバラを愛でる母娘とサリー。
  • 美と芸術と花への愛で結ばれた3世代。
  • イングリッシュガーデンの絵葉書は、いつもサリーのデザインの主なインスピレーションとなっています。
  • 写真:ルシア・マルカーノ

あなたは美しい帽子箱、クーラーボックス、ピクニックバスケット、バッグなどを作成し、この分野で革新を起こしてきました。あなたにとって創造性とは何ですか?また、日々の仕事において創造性はどのような役割を果たしていますか?

私は20年間、帽子箱を作り続けています。花のように魅力的な素材を扱うと、創造性を解き放ち、さまざまなものを作る機会が得られます。帽子箱、ピクニックバスケット、水差し、クーラーボックスなどに花束を入れることが多いのは、花のはかない性質を、より耐久性があり、保管して再利用できるものと組み合わせたいからです。

私にとって、花の入れ物がユニークであることも重要です。水を保持でき、実用的で、あまり高価ではないものなら何にでも花を入れます。

 

サリー・ハンブルトンがデザインするブーケのクリエイティブな特徴は何でしょうか?

私たちのブーケは、花の美しさを自由に表現し、高さも不規則です。コンパクトなブーケではありません。色だけでなく、質感にも豊かなニュアンスがあります。花々のコントラストがあり、常にその瞬間にぴったりの葉を添えています。まるでイギリスのコテージガーデンの野花で作ったようなブーケです。軽やかでロマンチックなスタイルですよ。

 

フラワースクールとフラワークラブも設立されましたね。それぞれどのようなものですか?

「フラワークラブ」はサブスクリプションのクラブです。定期購入していただくと、毎週、あるいは2週間に1度、月に1度、季節の花束をお届けします。どんなお花を買うかに心を悩ませることなく、いつもお家にお花を飾ることができるのです。

フラワースクールでは、クリスマスリースの作り方を学びたい方や、最近注目を集めているフローリストを目指したい方など、個人やプロの方を対象にワークショップを開催しています。

 

あなたのスタイルを真似しようとする人に出会うことはありますか?

もちろんあります。でも、私はいつも彼らには真似しないでほしいと言っています。きっとひどい真似になってしまうから。

いつも心に響く言葉があります。これは私の言葉ではありませんが、共感できるものなので紹介しますね。「私の真似をするな。私が見てきたものを見ろ」。人生で出会うあらゆる美しいもので自分を養えば、そこからその人独自のスタイルが生まれるでしょう。

私は世界中のバレエ(母はクラシックバレエダンサーでした)、オペラ、美術館、庭園、古い家、旅行、そしてインテリアから「栄養」をもらってきました。インテリアは、常に私の人生の大きな部分を占めてきました。

 

何か新しいプロジェクトを考えていますか?

そうですね、本を書こうと思っています。パンデミック中に書く予定だったのですが、当時は自分が書きたい本ではないと感じていました。でも、今はまさに本を書く時だと思っています。

教育的でインスピレーションを与えるような本にしたいと思っています。花をもっと身近に感じてもらい、どんな花を買えばいいのか、どのように組み合わせたらいいのか、そして花で空間を美しく飾る方法などを学ぶ機会になればと思っています。

  • サリー・ハンブルトン・フラワーズ・ラグジュアリー・マドリッド。
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  • 質感、色、花の高さの組み合わせは、サリー・ハンブルトンのブーケの創造的なアイデンティティのひとつです。
  • サリー・ハンブルトンが20年来デザインしている、有名なフラワー・ハットボックス。
  • サリーは、花の儚さと、保管や再利用が可能な容器を組み合わせるのが好きです。
  • 写真:サリー・ハンブルトン

あなたにとって旅とは?

私にとって旅はワクワクするものです。あらゆる場所に美しさを見つけるので、すぐにワクワクしてしまいます。旅とは立ち止まり、あらゆるものを吸収することです。また、サプライズにも出会います。

最近は仕事でカステリョンとバレンシアによく行きますが、バレンシアの光、オレンジ畑、そして人々がオレンジを詰めた袋を持って電車で帰っていく姿に感動しています。旅とは、日常から抜け出し、常に新しい発見をすることです。

イギリス、スペイン、ベルギー、ニュージーランド、コロンビア、モロッコで、世界最高の庭園を見てきました。メキシコの壮大な自然も見ました。でも、私にとってガーデニングの真髄はイギリスにあります。イギリスのゴールデンタイムのテレビ番組で最も視聴されている番組の一つは、ガーデニングに関するものなのですよ。

 

サリー・ハンブルトンにとってのラグジュアリーとは?

私にとって、 個人的なレベルでのラグジュアリーとは、行きたい場所に、行きたい時に、行きたい人と一緒に、好きなものに囲まれて過ごすことです。
プロフェッショナルなレベルでいうと、サリー・ハンブルトンでは最高品質の花と最高のフラワーデザイナーを揃えています。最高の商品と最高のチームの組み合わせから、私たちのブーケという、贅沢な職人技が光る小さな作品が生まれます。同じブーケは二つとありません。

 

あなたが旅に飽きることはないでしょうね……

アフリカにはよく行きますし、モロッコのバラの谷にも行ってみたいです。でも、メキシコやコロンビアも飽きません。あと、ラテンアメリカへの旅が大好きです。

 

次の旅行先は?

メキシコですね。そこでは講義やワークショップの開催を予定しています。

サリー・ハンブルトン。コロンビアにて。
コロンビアでフラワーデザインのワークショップを行うサリー・ハンブルトン。
サリー・ハンブルトン。コロンビアにて。
サリーはコロンビアへの旅で、世界有数のバラの生産国であるこの国のさまざまな花市場を訪れました。写真:パトリシア・セミール
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